« マカオ散策(5)-その他もろもろ- | Main | 中国・台湾 高速鉄道乗り比べ »

2007年5月19日星期六

国立空中大学

 日本では少なからぬ大学が通信教育課程を持っており、あるいは通信制のみの大学もあったりする。これら通信制の大学では、働きながら学びたい人やもう1度学びたくなった人、あるいは生涯学習の場として多くの人が学んでいる。1990年代末からは通信制大学院もあり、大学院レベルの研究もできるようになっている。
 かく言う私も放送大学で学んだことがあり、ここで学士(教養)と修士(学術)を戴いている。
 台湾にも放送大学と同様のコンセプトの大学、国立空中大学があり、台湾で同様の活動を行っている。日本で放送大学がテレビ・ラジオを通じて授業を行っているが、この空中大学も同様に放送メディアを用いた大学教育がスタートである。この「空中大学」という名称、日本の放送大学の英文名が「The University of the Air」なのだがそれに似た概念を導入しているのだろうか。日本語の「放送」を意味する「廣播」を名称に用いていないのが興味深い。なお、空中大学の英文名は「National Open University」であり、中国語名とは異なり「Open University」であることをアピールしている。
 なお、放送大学と空中大学は交流協定を結んでおり、学術交流や遠隔教育機関としての交流をしている(参考:台北駐日経済文化代表処日台両国各種学校締盟や学術協定一覧表)。放送大学は1985年に授業を開始、空中大学はそれに遅れること1年、1986年設立である。
Img_0834  空中大学の本部は台北の郊外、台北県蘆州市にある。台北市内からだと台北駅前や民権西路駅前からバスで行くことができる。交通案内はこちら


Img_0838  門をくぐると、蒋介石の像が出迎えてくれる。




Img_0839 Img_0840  空中大学の入り口に掲げられていたトレードマーク。やはり「放送」をアピールしているように見える。


Img_0843  大学本部の建物。土曜日で人がいなかったこともあるが、本部に土曜日に行くと活気が感じられないのは放送大学と同じか。
 この日は土曜日ということで人がいない。実はここに2000年に訪問したことがあり、その時は飛び込みだったにもかかわらず応接室で大学の歴史や学習システムを紹介していただいたのだが、今回は人がおらず残念である。
 しかしながら入り口近くのインフォメーションには人がおり、台北市内にある「学習指導中心」(放送大学の学習センターのようなもの、日本語に訳すとやはりそうなるし)を紹介していただいた。謝謝。

Img_0855  台北学習指導中心(台北学習指導センター)は地下鉄国父記念館駅近くにあるテレビ局、中華電視公司(華視)の13階にある。この「華視」は日本のTBSと姉妹局だそうで、さしずめ日本ならTBSの社屋に学習センターがあるようなものか。

Img_0856  台北学習指導中心の入り口。




Img_0862  学習指導中心でお勤めの方に内部を紹介していただいた。謝謝。
 説明戴いた中で驚いたのは、空中大学の授業はインターネット経由でオンデマンドで提供されていることである。案内していただいた方に実演していただいたのだが、空中大学のトップページ→「教學入口網站」から「數位學習(網路教材)」の項目をクリックし、IDとパスワードを入力すると本人が登録している科目の授業をインターネットで受講できるという優れものである。この職員の方が登録していた日本語の授業を見せていただいたが、空港での税関検査時の会話が授業で提供されていた。「認識空大」のページを見ると、2005年からこのような方法になったようである。テレビ・ラジオの授業も残っているようだが、あくまでオンデマンド授業が主な役割でありテレビではこれらのうちの新規開講科目や受講者の多い科目に絞って放送しているようである。
 センター内にPCが複数並んでいたが、これはPCを持っていない(使える環境にない)人がセンターに来て授業を視聴するためのものだと説明戴いた。放送大学の学習センターにある再視聴用ビデオブースのようなものか。

 日本の放送大学はこうしたインターネット経由での授業を提供していない。「広く社会人に大学教育の機会を提供すること」という放送大学の目的からすると容易にアクセス可能な(UHFやラジオ聴取可能な地域に住んだり、さもなくばスカパーに入る必要があるが)方法を選択するのは自然なことだと考える。また、私も含めて特定時期以前に高校を卒業、もしくはそれ相当の資格を得た人はPCの操作が必須知識でなかったこともあり、PCを不要とする授業で「広く社会人に大学教育の機会を提供する」ことには全く異論はない。
 他方、社会人としてあるいは大学に入る前段階でPCの基本的な知識や操作を会得している人は多い。こうした人がインターネットを通じて大学教育を受ける、というのもありだと思う。それに、インターネットやPCを活用することで更なる遠隔教育や遠隔学習の機会が得られるのである。空中大学が放送授業を残しつつインターネット経由のオンデマンド授業を主にしているのはこの立場に立ってのものと言えよう。
(追記:日本の放送大学でも、2007年以降新規開設のラジオ科目はインターネット配信されています)

 このほか、空中大学の特徴を、ウェブサイトや募集要項から気付いた範囲で挙げてみる。

・卒業時には、台湾の他大学同様「学士」の学位が得られる。
・1年2学期制。1学期は9月に、2学期は2月に始まる。
・人文学系、社会科学系、商学系、公共行政学系、生活科学系、管理与信息学系の6つの学科がある。
・毎学期全ての授業が開講されるわけではなく、ある学期に開講される科目は決まっておりそのスケジュールに沿って受講する。
・単位を取得するには放送授業(オンデマンド授業)・面接授業・試験の3過程を経ることが必要。放送授業と試験だけで単位を得ることはできなさそうである。面接授業は週末に開講される(学期毎の開講科目が決められているのはこのためか)。
・澎湖・金門島を含め台湾各地に学習指導中心が設置されている。
・台湾には徴兵制度があり、大学在学中は入隊を延期することができるが空中大学ではそれは不可。
・全修生(学士取得を目指す学生)は20歳以上であることが求められ、他の大学より年齢制限(下限)が高い。
・在籍年数の制限はない。
・付属校に「空中大學附設空中專科進修學校」がある。「副学士」が得られるとのことでこちらは短大・専門学校相当。なお、修士課程はない。
・高雄には、高雄市立空中大学という別の遠隔教育を行う大学がある。

 空中大学のテキストは市内の書店で購入することができる(放送大学のテキストも日本の本屋で買うことができる)。これら書籍は放送大学にいるときに活用させてもらったし、論文の参考文献として挙げたこともある。台湾の遠隔高等教育機関として、また良書を数多く出している空中大学の更なる発展を期待したい。

|

« マカオ散策(5)-その他もろもろ- | Main | 中国・台湾 高速鉄道乗り比べ »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/73410/15132267

Listed below are links to weblogs that reference 国立空中大学:

« マカオ散策(5)-その他もろもろ- | Main | 中国・台湾 高速鉄道乗り比べ »