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2007年8月20日星期一

『山の郵便配達』と『NNNドキュメント'07』

 先週末新宿で、『中国映画の全貌2007』で上映されていた『山の郵便配達』を見てきた。この『中国映画の全貌』、私が最初に学生だった1990年代前半からずっとやっており、ミニシアターで一度に中国映画を何十本も上映するのであり、今回は74本一挙上映とのことである。当時は千石の三百人劇場でやっており、何度か見に行ったものである。当時は(台湾映画もそうだったが)日本では中国映画の殆どが大規模な興行とは無縁であり、単館上映が殆どであった。
 『山の郵便配達』、1980年代はじめの湖南省の山村を舞台に、山道を2泊3日かけて歩く郵便配達の仕事を父から受け継ぎ、その日が初仕事の青年の目から語られている。引退する父が青年の初仕事に同行すると言い、断れずに一緒に初仕事、父にとっては最後の山道行をするその日が舞台である。父がこのような仕事でずっと不在がちだったため距離を縮められずにいた青年が、初めての2人での山行で父の半生を理解し父を二人称ではなく「お父さん」と呼ぶことができるようになる(そのシーンも、途中で休憩していた父を促し「お父さん、もう行こう」-確か「爸, 该走吧」だったと思うが-と言う淡々とした場面である)、父子の心の交流を描いている。

 この映画の中のエビソードに、山深くに住み学校に通えない少年に「函授大学」(大学通信教育のようなもの)の手紙を届けに行き、受け取った少年が、次の村に向かう二人に対して山の上から手紙の内容を嬉しそうに叫んで教えるシーンがある。学校に通えなくても「通信教育があるさ」と言って笑う前向きな、報道記者にあこがれる少年である。
 その夜テレビで、『NNNドキュメント'07 シン先生と瀋さん 人生を変えた教室』を見た。中国四川省西部の小さな町で日本語を学び、北京のJICA事務所にアルバイトとはいえ就職が決まった青年と、この街に青年海外協力隊として派遣されて彼らに日本語を教えてきた日本語教師の話である。
 青年の故郷はこの街から歩いて4時間かかる、電気も通っていない山村である。『山の郵便配達』の舞台と重なる、「中国の発展とは無縁」という言葉が似合う場所である。青年の母は借金をして彼を街の学校に送り出し、彼は期待に応えて勉強をして北京行きを掴み取ったのである。
 彼は1年後に契約延長を獲得し、1年ぶりに故郷に帰る。彼の収入は農村生活の数十倍、北京で働く彼は村の希望の星である。借金は全て返済し、村に着いたときの宴席は全て彼持ちである。
 他方、彼には弟がいるが、1人分の学費しか工面できなかったとかで弟は農村での生活を続けている、というか続けざるを得ない。兄は「もう農村での生活には戻れない」と言う。ここでは、北京で働く青年とその故郷・家族を通して中国における地域格差を描く一方で、農村に残らざるを得なかった弟をその象徴としている。前述の『山の郵便配達』で函授大学で学ぶ少年に描かれていたポジティブさは、ここにはない。

 話はこうした地域格差と落伍していく中国内陸の農村というステレオタイプで終わるのかと思いきや、かつては往復4時間かけて隣村の学校まで行かないといけなかったこの村には彼の働きかけで学校ができ、その屋根瓦は青年が寄付したものなのだとか。
 教育が必ずしも人生を変えるとは思わないしそれがいい方向に向かうとも限らない。教育を得て視野が開けた少年少女が村の外の世界に憧れることもあろうが、それが本人にとって幸せな結果に結びつくとは限らない。彼のようなケースは稀で、内陸の農村部から収入を得ようとして北京や上海に流れてきた少なからぬ人達がそこで低賃金・低条件の労働に従事している。それも幸せな結果に結びつくとは限らない。
 しかしながら、「教育が人生を変える可能性がある」のは確かであるし、また「教育が社会を変える可能性がある」のも確かである。この青年もそのことをわかっているようで、自らの収入を仕送りなり村の学校への寄付という形で故郷に還元している。自分が住む街なり村なりをより良くしたい、自分の後に続く人達にいい教育なりいい生活を営んでもらいたい、という心意気は見習いたいものである。そして、自分がどうあるべきか常に考えている、ということも。

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