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2007年9月7日星期五

『長江哀歌』

 台風一過の今日、仕事帰りに日比谷のシャンテ・シネで映画『長江哀歌』(原題:三峡好人)を見てきた。
 舞台は三峡下りの途中、奉節。16年前に別れた妻子を探しに山西省からやってきた男と、2年間音信不通の夫を探しにやはり山西省からやってきた女のストーリーが、殆ど交錯することなく展開される。
 舞台となった奉節は三峡ダム工事で川底に沈む街で、既に男が持っていたメモに書いてあった妻の住所は水没しており、また更なる水面上昇に向けて立ち退き・移転や建物の取り壊しが進む、廃墟となりつつある街である。監督の賈樟柯はこの街を「死刑宣告された街」(映画パンフレットより)と称している。観光船のアナウンスが「2006年には水位が更に150メートル上昇します」と言い、男が食事をする食堂で少年が『老鼠爱大米』を歌っていたり船上で別の?少年が『两只蝴蝶』を口ずさんでいる(どちらも2004年のヒット曲である)、そんな時期である。
 女は夫の変わりようを見て離婚を切り出す。「好きになった人と上海に行くの」と言いながら彼女は一人で上海への船に乗る。他方男は妻を捜し出すが、彼女は兄の借金のカタにとられ、船の上で働いている。男はその借金3万元を1年のうちに返すと言い、奉節を去り山西省へ向かう。山西省には危険だが金になる炭鉱の仕事がある。帰る時に妻と一緒だったかどうかは、わからなかった。
 舞台となっている奉節だが、三峡下りの観光イメージとは異なり、映画の中では曇りの日が多い。また先に述べたとおり今や廃墟となった、「死刑宣告された街」である。その中で妻の住所が書かれた紙切れ1枚をあてにやって来た男がしばらく解体作業をしながら暮らしているし、何かと世話を焼くチンピラや男が泊まっている旅館(何と1泊1.5元)の主人などがそこでたくましく暮らしている。解体工事をする仲間もいる。「死刑宣告された街」にも、その日その日を生きている人達がいるのである。しかし、その光景は上海などとはあまりにもかけ離れたものである。
 この映画には有名俳優や美男美女(これは好みにもよるだろうが)が出てくるわけではない。山西省からやってきた男と女がこの「廃墟の街」で尋ね人を探すことで希望をつかもうとし、男は妻を探し当てて希望をつなぐが女は新しい生活へ踏み出そうとするのであった。廃墟の街で未来を見出そうとするのである。

 ところで、映画の冒頭奉節に向かう男が乗っていた船とすれ違う船のアナウンスが「奉節発崇明島行き」であった。崇明島のことは拙ブログで先に紹介したことがあるが、上海に住んでいた頃に読んだタウン誌に、奉節だったかどうか忘れたが三峡ダム工事で水没する街に住む人が崇明島に移住する船に乗る様子が載っていたのを思い出した。揚子江の河口で三峡の思い出を抱えながら、決して容易ではないであろう移住先での日々を過ごす人がいるのである。
 さらに、10元札の裏は三峡の光景なのだとかで、解体現場の人達が男に紹介していた(他方旧50元札の裏は、男の故郷の風景なのだとか)。表の毛沢東ばかり気にしていたが、次に10元札に出会うことがあれば裏もよく見てみたい。そのときには、この映画を思い出すだろうか。

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