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2008年1月8日星期二

子どもの頃はこんなだったか?

 この前の日曜日、『NHKスペシャル 激流中国 5年1組 小皇帝の涙』という番組を見た。何かと注目される中国の姿を共産党幹部から出稼ぎの人達までいろいろな視点でとらえるシリーズの中で、一人っ子政策の中で「小皇帝」と呼ばれて大事にされる中国の子どもの姿を追った回である。
 番組自体は中国雲南省・昆明市の小学校を舞台に、大事にされている「小皇帝」が、親や教師など周りの大人も含めて厳しい学力競争に巻き込まれており、その中で子どもたちに班分けをさせると成績で班分けがされて仲間外れの子どもが出たりこの年にして親子の軋轢が起こったりと、悩ましいことが起こっていることを知らせる内容であった。
 この番組の冒頭で、その小学校の5年生のクラスで学級委員を選ぶ選挙の様子を取り上げていた。8人立候補した中でクラスで一番成績が良い子どもが当選したとのことだがこの選挙、候補者の子どもが「私がマジックを使ってみんなの成績を上げて見せます」だの「僕は勉強もできるし賢いし何でもできる超人です」だの「成績なら僕も負けてないでしょ?」だの、小学生の学級委員選挙とは思えない自信満々の子どもたちの姿が映っていた。小学校の学級委員選挙で、こんなことを聞いたことがあったかなぁ。

 この学級委員長選挙の様子をクローズアップした別の番組が、その日の深夜に放送されていた。『“民主主義”~世界10人の監督が描く10の疑問~ (9)中国 “こども民主主義” Please Vote for Me』という番組である。「民主主義とは何か」を問うための「デモクラシー・プロジェクト」の一環で世界各地の様子を取り上げるシリーズであるが、「中国には『西洋型民主主義』がない」とかで、取り上げたのは小学校の学級委員選挙であった。
 こちらは中国・武漢市のある小学校での、3年生の学級委員選挙である。3人の候補者がいた(「現職に新人2人が挑む」という構図である)が、この選挙が凄かった。候補者であるこどもは上記に増して自信満々だし中傷合戦をするし、何かと親が介入してきたりクラスの他の子どもが「助手」になっていたりと、地上デジタル放送の番組表が「アメリカ大統領選挙さながら」と書くのがわかる内容であった。
 本当にアメリカの大統領選挙さながらにクラスで公開討論会があったのだが、「○○さんは給食を食べるのが遅いし、すぐ泣きます」だの「XXさんはすぐ人を叩きます」だのと中傷合戦をして相手の欠点を挙げていき、終わりには相手に対し「僕の方が準備万端だったでしょ?」などと圧力をかける子どももいた。極めつけは現・学級委員に挑む子どもが「僕は独裁者にはなりません」と言い、相手=現・学級委員を「独裁者」呼ばわりしていたことである。
 これらは子どもがもともとこんなに攻撃的だったわけではなく、親の入れ知恵である。親が学級委員選挙に介入し、子どもへの助言のみならずクラスの子どもへの介入もしていた。自分の子どもに対して「国家主席への第一歩よ」と言う親もいたし、討論会での相手の攻略方法や公開演説の内容も親が考えているのであった。

 「小学校3年生の子を持つ」親というのは、私と近しい世代であろう。もし中国に生きていたら、文化大革命の記憶はおぼろげであるかもし若ければその記憶はなく、親が文化大革命の影響を受けてその話を聞かされている世代である。人を「資本家」だの「修正主義者」呼ばわりした・された記憶や伝承がその子女の学級委員選挙に影響を及ぼした、というのは穿ちすぎであろうか。あるいはその親たちのさらに親の世代が「下放」など文革期の混乱で教育機会を制限され、それが今の教育熱につながっているのか。
 先述の教育熱も、『激流中国』自身は満足に教育を受けられなかった世代が改革開放の流れでリストラに遭い、子どもにはそういう思いをさせたくなくて教育熱心になるという取り上げ方をしていた。私と近しい世代だとすると確かに学校を卒業する頃はまだ改革開放の恩恵もシンセンあたりに限られ、最近になってようやくその恩恵が行き渡ってくるも自身は就職時にはその恩恵は受けられていない世代なのであろうが、それにしても親子の接し方や興味の向け方が何だかなぁ、という印象を持った。

 で、『子ども民主主義』で取り上げていた学級委員選挙では現・学級委員が当選したが、この子は最終演説でクラスメートに中秋節のグリーティングカードを配っていた。それでいいのか?番組の中でいちばん他の候補者を中傷していた(と思う)子どもは、落選していた。
 それにしても、こんなに学級委員候補が皆他の同学を罵倒する(むしろこの子どものほうが「独裁者」ではないのか)というのはどうなんだろう。あまり日本の学校ではないのではなかろうか。少なくとも私が子どもの頃の学級委員選挙ってこんなだったっけ。
 「国家主席への道」や中国ビジネス界を渡り歩くには、ここまでの図太さが必要なのだろうか。

 かと思うと、以前見た『激流中国 富人と農民工』では、子どもを高校に通わせるために遠く出稼ぎに出ている人を取り上げていた。当局が解決したがっている、そして解決すべき「矛盾」というのが見えるような気がする。
 『子ども民主主義』で見た落選した子どもの涙、そして当選した現・学級委員が誇らしげに朝の体操を仕切るところが新たな「矛盾」の象徴にならないことを願いたい。

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Comments

はじめまして。
私も元・上海在住者です。

『激流中国』・『民主主義』両方見ました。
あの演説口調は雲南も武漢もどちらも同じで、どちらも怖い。

現職くんのプレゼント作戦、ほんとにひいてしまいました。
あれは日本ではありえないでしょうね。

Posted by: aizi | 2008年1月10日星期四 at 下午8:03

aiziさん、はじめまして。
現職くんのプレゼント作戦、「民主主義」ではなく「人治」なり「買収」なりの象徴のように見えてしまいました。日本でやったら新聞に取り上げられそうですね。あと堂々と?他の2人を批判していた新人くんと同じクラスにはなりたくないなぁと思いました。
うまく言えませんがいろいろな面で「行き過ぎ」のような感じがします。『激流中国』では担任の先生も問題意識を持っているようでしたが…
上海に住んでおられたとのこと、これからもよろしくお願いします。

Posted by: はぎお@貴ノ浪世代 | 2008年1月12日星期六 at 下午6:42

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