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2009年7月13日星期一

『台湾人生』

20090712095 昨日のことであるが、東中野へ行って映画『台湾人生』を観てきた。2週間前、封切り直後の日曜日に観ようと思い足を運んだのだが、1日1回の上映ということもありミニシアターの少ない席は満席で、立ち見もいっぱいだとのことでそのときは見ることはできなかった。昨日は40分前に着いて無事座って観ることができたが、やはり満席で通路に敷かれた座布団に座って観ることになった人もいた。さらに早々と満席になったとかで、予定時間より少し早く上映開始となった。
 この『台湾人生』、台湾で日本統治期に日本語で教育を受けたり日本語の環境で育った方々へのインタビューを中心にしたドキュメンタリー映画である。当時日本人経営のコーヒー園で働き今も茶畑で茶摘みをする女性、当時台湾人がなかなか進学できなかった女学校へ進み茶道や華道を習い「今の日本人以上に日本人」と言って憚らない女性、台湾原住民で戦後立法委員(国会議員)を務めた後に旧友を訪ね故郷を訪ねそれぞれを大切にする男性、公学校の担任でその後の夜間中学進学を支援してくれた日本人の先生を忘れずにいる男性、太平洋戦争での従軍・2・28事件での自らへの拷問や「白色恐怖」で弟を亡くすという過酷な経験を経て今は台北の二二八紀念館と総統府でボランティアガイドをする男性、この5人のかつてのエピソードと現在の様子、そして語りが交互に展開されていく。彼らの話は殆ど日本語で展開され、話し相手によって台湾語・台湾国語(中国語)・客家語と使い分けていてそれだけに我々の心に響き、さらに日本統治期・蒋父子期そして今の台湾を含めた台湾社会の複雑さと台湾の歴史を示すのである。
 この5人がそれぞれに語る、日本統治期に教えられた礼儀や正邪の判断を美徳として身につけつつ敗戦とともに台湾を去った「日本」に対する愛憎半ばの複雑な思い、日本統治期の次に来た蒋介石父子の戒厳令期を生きさらに現代の台湾を生きる中から出てくる深い言葉が印象に残る。戦後の「白色恐怖」で過酷な人生を歩んだ方が総統府で「蒋介石の文物の紹介はしたくない」と語ることも、今でも茶畑で働く女性が旧正月に家族に囲まれて語ることも、今日に至るまでの複雑な台湾の歴史を歩んできた中から出てきた言葉である。
 恩師の墓参りのために千葉を訪れた男性、その墓参りには孫娘も一緒について来ていた。彼女は日本語を学んでいるとかで祖父と流暢な日本語で会話ができ、男性は「孫が日本語を学ぶとは思いもよらなかった」と言っている。かつての「日本語世代」から今の若い世代へ、日本への思いがそして祖父の経験が経験が孫へと受け継がれようとしている光景である。

 この映画が初監督である酒井充子監督はもともと会社の営業を経て新聞記者をされていたのだが、1998年に日本で公開された台湾映画『愛情萬歳』を観てその中の台北の風景に関心を持ち台湾を訪れ、その時出会った「日本語世代」の台湾の年配の方との出会いから台湾のことを伝えようと思い、その後映画界に転じて仕事をする中で台湾をテーマにした映画を作ろうと思い続け足かけ6年に渡る取材を経てそれが今回実現したのだとか。「台湾のことを伝えたい」監督の手で「『日本語世代』が今の日本人に対して話しておきたいこと」が伝えられたと言えよう。
 この日は上映後に監督のトークショーがあり、対談者の「もっと特定の部分や主張に焦点を当てることができたのでは」との問いに対して監督は「取材して見聞きしたことをそのまま伝えたいと思った」と仰っていた。勿論監督が見聞きしたことのうち時間の都合で伝えられているのはごく一部なのだろうが、それでも古くから台湾に住む人たちのことが深く伝わり、彼らの心に触れた思いがする映画であった。
 この『台湾人生』、全国各地で放映されるようであるしこの「ポレポレ東中野」では8月から昼間にロングラン上映をするそうである。酒井監督がトークで仰っていた、台湾の若者を題材にしたという次回作が楽しみであるが、この『台湾人生』も台湾の隣に住む人として多くの人に観てもらいたいと思うし、私も「隣の」台湾には常に関心を持っていたい。。

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Comments

こんにちは。
トラックバックをさせて頂きました。日本語世代の生の声を「保存」したこの映画は貴重だと感じます。多くの方々に見て欲しいと思います。

Posted by: Sumi | 2009年8月8日星期六 at 下午7:45

Sumiさん、はじめまして。
コメントありがとうございました。十数年前にはこの世代の方々を台湾で当たり前のように見かけたのですが、時の流れを感じます。仰るように、多くの方に観てもらいたい映画です。
トラックバックも確認しました。台湾のあちこちに行っておられる由にて、拝見していたら私もまた台湾に行きたくなりました。

Posted by: はぎお@貴ノ浪世代 | 2009年8月9日星期日 at 下午2:54

はぎおさま

お返事を下さり有難うございます。
日本語世代に会えるのも、どんなに長めに考えてもあと10年です。今のうちにせっせと通おうと思っています。

Posted by: Sumi | 2009年8月11日星期二 at 下午8:24

Sumiさん、再びコメント戴きありがとうございます。
日本の「戦争を知っている世代」と同様に、台湾の日本語世代からかつての話を聞きだすのが難しくなっていくのは仰る通りです。後世には歴史となろうとも私自身は彼らの話を心に刻みたいと思います。

p.s.拙ブログにも「台湾」カテゴリーがありますので、ご覧戴ければ幸甚です。

Posted by: はぎお@貴ノ浪世代 | 2009年8月11日星期二 at 下午11:56

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Tracked on 2009年8月8日星期六 at 下午4:53

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