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2010年2月23日星期二

『台北に舞う雪』

 先週の土曜日、台湾を舞台にした映画『台北に舞う雪』(原題:『台北飄雪』)を観てきた。先月観た『海角七号 君想う、国境の南』に続き、シネスイッチ銀座で台湾を舞台にした映画を続けて上映している。
 封切り日に観に行ったのだが、正月休みに観た『海角七号~』の時ほどの入りではなく1階席の中程が程よく埋まっているといった感じであった。

 舞台は台北とは言っても台北市内からは離れたところにある、菁桐という小さな街。この街で育った青年・モウは街の雑用を一手に引き受ける優しい人である。そんな彼の前に、メイという女性が現れる。彼女は売り出し中の新人歌手だが声が出なくなり、行き先を告げず携帯電話も切ってこの街へとやってきたのである。メイが菁桐で過ごす間に2人は打ち解け…というラブストーリーが、菁桐の街や今年だともうすぐ開かれる元宵節の天燈節を背景に描かれている。

 失踪したメイを追う新聞記者、ジャック(演じるのは『遠い道のり』に出ていた莫子儀=モー・ズーイー)が彼女の行き先を隠すモウに対して「人は何故失踪するのか」を問う。ジャックが自ら発した答えは、失踪して誰からも探されない人生は悲しい、人は自分が必要とされているか確かめるために失踪するのだ、といった内容の言葉だった。自分が必要とされているか確かめるということは、世の中や周りの人と繋がっているか、ということであろう。
 モウもまた幼少期に母親がこの街を出たきり戻ってこず身寄りがない。それゆえにこの街で育ててくれた人への恩返しと言ってこの街で忙しく働く。そんな彼は「台北に舞う雪」の向こうに見えた母親の残像をきっかけに母親探しの旅に出る。街の喫茶店のウェイトレスであるウェンディが言うには、「探して見つからないのと探さないのとは違う」。

 偶々最近姜尚中の『悩む力』(集英社新書、2008)を読んだのだが、その中で人はなぜ働くのか、なぜ死んではいけないかを説く際に「他者からのアテンションを求めて」(p.128)と述べ、人が他者との繋がりを求める気持ちが命を絶つことを防いだり働くことのモチベーションになるとしている。恋愛についても「そのときどきの相互の問いかけに応えていこうとする意欲」(p.146)の表れだとしている。
 メイは一時期自分の身の回りにいた他者との繋がりを絶とうとしたが、モウや街の人との交流によって「繋がり」を取り戻し、そして厳しい世界かもしれないが再び歌の世界に戻っていく(そしてそれはモウとの別れを意味する)。そしてモウは育ててくれた街の人への恩返しとして、街の人との繋がりを大切にしてこの街で働いていたが、母親にも世の中と繋がり続けていて欲しいと思い、あるいは母親との繋がりを求めてというのもあろうが自ら母親を探しに街を出る。
 菁桐を舞台にしたラブストーリーの合間に、この「人との繋がりを求める心」というものが垣間見えた映画であった。

 一昨年の「台湾シネマ・コレクション」で観た映画、そして先月観た『海角七号~』もそうだったが、台湾の風景や街並みを舞台に気軽にその世界に入っていける映画であり、文庫本の小説をめくるように気軽に観ることができる映画だったと思う。ラストシーンはちょっと淡白かと思ったが…

 この映画の主な舞台となった菁桐、台湾北部のローカル線・平渓線の終点である。平渓線には何回か乗ったことがあり、途中にある十分瀑布や十分老街のほうが観光地として知られていて菁桐は終点の駅のイメージが強かったが、菁桐の街が映画の舞台になり、またこの街を舞台にしたストーリーができていることに驚きである。

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2007年5月に菁桐を訪れた際の写真を再びぼちぼちとアップ。
 まず菁桐駅。瓦葺きのシンプルな駅舎は台北県の史跡に指定されているのだとか。奥の建物の壁にあるペインティングが、映画でもよくわかった。



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 菁桐駅に着いたディーゼルカー。映画では頻繁に背後に列車が映っているが、実際には1時間に一本程度の往来であり、映画は「映り過ぎ」と言えよう。







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 菁桐の駅前。平日の午後ということもあり、人は少ない。









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 菁桐の駅へと続く道。









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 駅前にあるトロッコ列車やその屋根には、竹筒が数多くぶら下がっている。映画の中でも、モウがメイの健康を願った言葉を竹筒に書き、ロープ伝いにメイがいるところに送る場面がある。






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 菁桐の一駅手前、平渓駅前の通り。新聞記者のジャックが「坂道が多い」と嘆いたのはこちらのイメージか。

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Comments

はじめまして、
同じ映画の記事を書きましたのでTBさせて下さい。
菁桐に行かれたんですね、
私もいつか行きたいなぁと映画を見て思いました。
また来ます。

Posted by: soramove | 2010年3月6日星期六 at 上午11:09

soramoveさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。あと、トラックバックも戴きました。ブログも拝見させていただきました。たくさん映画をご覧になられていますね。
上の写真のほか、先週天燈節のときに再び菁桐を訪れましたが人がとても多く、映画の雰囲気を感じるには祭りの時期ではないときのほうがよさそうです。

Posted by: はぎお@貴ノ浪世代 | 2010年3月6日星期六 at 下午10:57

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「台北に舞う雪」★★★ チェン・ボーリン、トン・ヤオ、トニー・ヤン、モー・ズーイー、ジャネル・ツァイ、テレサ・チー 主演 フォ・ジェンチイ 監督、112分 、 2010年2月20日公開、2009,中国、日本、香港、台湾,ゴー・シネマ (原題:台北瓢雪/Snowfall in Taipei )                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 平渓線の終点の菁桐駅の駅舎は日本統治時代のものが 今もその... [Read More]

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